東京高等裁判所 昭和34年(ツ)23号 判決
本件記録によれば被上告人が第一審において本件土地を訴外村上辰太郎に賃貸したとの上告人渡辺の主張を自白したものであることは所論のとおりである。しかし昭和三十二年十月二十二日午前十時の本件口頭弁論期日に被上告人は同年十月十一日附準備書面に基き陳述したものであることは本件記録上明白であり、右準備書面に被上告人は「訴外村上辰太郎との間に本件土地に賃貸借契約を締結したことはない」旨記載されていることも本件記録上明白なのである。つまり被上告人はこの点に関する前記第一審の自白を取消し、右村上の賃借権を否認したのである。而して原判決によれば被上告人はその際第一審における右自白は真実に反し錯誤に基く旨を述べたのである。もつともこのことは原審調書に明記されていないけれど、審理にあたる裁判官が口頭弁論において直接聴取した当事者の主張はその日の調書に記載がないからといつて訴訟資料とすることができないものではなく、原審裁判官は右自白の撤回が真実に反し錯誤に基いたものであるとの被上告人の主張を直接聴取したものであること原判決によつて明白である。従つて原審は被上告人の主張しないことを判断したことにはならないのである。
(梶村 岡崎 堀田)